大晦日
2006年 01月 01日
大晦日、練習も休みでサンジョルジョ・マッジョーレ教会の前に来ていた灯里は藍華達と待ち合わせをしていた。
この日に限って風がやや強く、寒波も合わせてやって来たネオ・ヴェネツィアではどんよりとした雲が立ちこめ今にも雪が舞ってきそうな感じであった。
「灯里ー、お待たせー!」
「あ、藍華ちゃん。」
灯里の友人である藍華が待ち合わせ場所にやって来た。
さすがにこんな天気でゴンドラ漕いで出歩くのはきついものである。色々と着込んでも顔に当たる冷たい風が痛い。
「ほへー、藍華ちゃん顔が痛そう。」
「こんな天気でゴンドラ漕ぐのは無謀だわ。どおりでプリマの人たちも見かけないと思ったわよ。」
「そーいえば、アリスちゃんは?」
待ち合わせ場所にまだ到着していない後輩を心配して灯里が尋ねる。
「私はここにいます。」
「のわぁ、後輩ちゃん?!」
「はひっ?!」
突然後ろから声をかけられて二人は大きい声をあげてびっくりする。
アリスはしてやったりといったちょっと意地の悪い笑顔を浮かべる。
「いつ気が付くかなと思って黙っていました。」
「後輩ちゃん、脅かすのでっかい禁止よっ」
いつの間にかアリスの口癖がうつっていた事に気が付いた藍華は、びっくりした顔をしていた灯里やアリスとともにひとしきり笑うのであった。
「アリシアさん、ただいまですー。アリア社長もただいまです。」
「ぷいぷいにゅー!」
「「おじゃましまーす。」」
年末の買い出しに出かけてお目当てのものを手に入れた一行はアリアカンパニーに戻ってきた。
「お帰りなさい、灯里ちゃん。あらあら、藍華ちゃんにアリスちゃんも。」
「こんにちはです、アリシアさんっ!」
ネコを被ったかのように急に口調を変えて挨拶する藍華にアリスは
「やっぱり藍華先輩、アリシアさんにでっかいラブなんですね・・・・・・」
と少し呆れた反応を示すのであった。
「当然よ、アリシアさんという偉大な人がいなかったら私、ウンディーネになる事はなかったのよっ!」
「藍華ちゃん、前々から思っていたんだけど、晃さんってそんな厳しい人じゃないと思うんだけどなぁ。」
「甘いわよ、灯里。晃さんはあんた達が思う以上にメチャ厳しいんだから。」
そこで藍華は一旦溜め息をつく。
「晃さんは一言で言うなら『ウンディーネ界のハートマン軍曹』ね。」
「ハートマン軍曹?」
3世紀も前の古典映画を持ち出されて二人は戸惑う。
「スパルタってもんじゃないわよ。下手したら軍隊並みかもしれないわ。特訓続きでもうトホホ。」
「藍華ちゃん・・・・・・」
藍華の背後にアリシアと晃がいるのに気が付いた灯里は心配そうに声をかける。
「灯里、私の心わかってくれるの?!」
「いや、あの・・・・・・」
「ほんっとうに私、いい友達持ったわー。神様、感謝しますっ!そこで、お願いがあるんだけど、アリアカンパニーと姫屋の間でトレード・・・・・・」
灯里は思った。間違いなく藍華ちゃんは間違いなく晃さんにお仕置きされると。
「すわっ」
「ぎゃーすっ!」
藍華が恐る恐る後ろを振り向くと晃が額に青筋を立てて仁王立ちしていた。
「藍華、この晃様の前でよくそういうことが言えたものだな?」
「あ、あ、あき・・・・・・」
歯の根が合わない藍華はただ冷や汗かいて震えるばかり。
「お仕置きスペシャルコースで逝くか、藍華?」
「灯里、後輩ちゃん、助けてっ!」
「でっかい自業自得です、藍華先輩。」
死刑宣告を行う裁判官のつもりになったアリスは藍華に引導を渡すのであった。
「いやぁぁ?!ヘルプミー、アリシアさんっ!」
「あらあら」
困った顔のアリシアも引き摺られていく藍華を見送るだけ。
紙を引き裂くような女性の悲鳴が上がるのはその後、すぐのことであった。
しばらく再起不能になった藍華を介抱しながら灯里はアリシアに問いかける。
「そう言えば今日はなぜ晃さんがいらしたんですか?」
「うふふ、私たち3人組恒例の習慣で大晦日はお互いの所に行き合ってお掃除したりとかお茶したりとかするの。」
「ああ、今年はアリシアのところでやる事になっていてな。掃除の手伝いに来たんだ。」
プリマになってからも年末年始は3人で集まることが多いのだという。大晦日のこの行事も3人が知り合った頃よりずっと続いているとのこと。
「後輩達が出来てより楽しい年末になりそうだな。」
「そうねぇ。もうそろそろアテナちゃんも来る頃ね。」
道に迷った揚げ句看板にしたたか顔面打ち付けたアテナが到着したあと、6人と1匹は分担して大掃除や正月料理に邁進するのだった。
夜、掃除も正月を迎える準備も終わり一段落したところで彼女達は暖炉の前で昔話、近所のうわさ話に花を咲かせるのだった。
「そういえば年越し蕎麦まだ食べていませんね?」
「出前とっちゃおうか。」
「アリシア、カツ丼並な。」
いつもの感覚で注文してしまう晃。みんなして爆笑するのであった。
赤面した晃は『すわっ』とかいいながらアリア社長のもちもちぽんぽんに八つ当たりするのであった。
「ぷいにゅぅ〜」
「晃さんの以外な一面を垣間見た気がします。」
「後輩ちゃん、私も意外だったわよ。」
出前の蕎麦も平らげ、みんな思い思いにくつろいでいる。
その中で灯里はアリシアと話をしている。
「私、マンホームにいたころの正月は家族とだけでまったりとしていたんですけど、こういう形で正月を迎えるのは初めてです。」
「灯里ちゃんが楽しそうでよかったわ。2年目のアクアはどうだったかしら。」
アリシアはほほ笑みながら灯里に問い掛ける。
「新しい友達も増えましたし、グランマにも出会えましたし、いろんな意味でとても充実した1年間だったと思います。」
「うん。出会いは人に対していろんなきっかけを与えてくれる。どんなきっかけをつかんでどんな風に歩んでいくのかは灯里ちゃん次第。」
「私次第・・・・・・」
「そう。きっかけを元にして人は成長できる機会を得ることが出来る。嫌なお客さんに出会うことがこの先あるかもしれないけどこれも成長できるきっかけの一つ。」
そこでアリシアは伸びをする。
「うーん・・・・・・。もうそろそろ広場へ行く時間ね。最後に灯里ちゃんに一言。」
アリシアは灯里に微笑んだ。
「灯里ちゃんならどんな人とでもうまくやっていけると思う。立派なプリマになれると私は確信しているわ。」
「アリシアさん・・・・・・」
灯里はアリシアからの励ましの言葉に胸を打たれる思いだった。
プリマになるために一生懸命頑張ってきた灯里の努力が報われた時でもある。
「アリシアさん・・・・・・」
「なぁに、灯里ちゃん?」
「私、頑張ります。アクアで一番の感動をお客様にあげられるようなウンディーネになって見せますっ!」
「うん。」
灯里の決意を受け止めて嬉しく思うアリシアであった。
この日に限って風がやや強く、寒波も合わせてやって来たネオ・ヴェネツィアではどんよりとした雲が立ちこめ今にも雪が舞ってきそうな感じであった。
「灯里ー、お待たせー!」
「あ、藍華ちゃん。」
灯里の友人である藍華が待ち合わせ場所にやって来た。
さすがにこんな天気でゴンドラ漕いで出歩くのはきついものである。色々と着込んでも顔に当たる冷たい風が痛い。
「ほへー、藍華ちゃん顔が痛そう。」
「こんな天気でゴンドラ漕ぐのは無謀だわ。どおりでプリマの人たちも見かけないと思ったわよ。」
「そーいえば、アリスちゃんは?」
待ち合わせ場所にまだ到着していない後輩を心配して灯里が尋ねる。
「私はここにいます。」
「のわぁ、後輩ちゃん?!」
「はひっ?!」
突然後ろから声をかけられて二人は大きい声をあげてびっくりする。
アリスはしてやったりといったちょっと意地の悪い笑顔を浮かべる。
「いつ気が付くかなと思って黙っていました。」
「後輩ちゃん、脅かすのでっかい禁止よっ」
いつの間にかアリスの口癖がうつっていた事に気が付いた藍華は、びっくりした顔をしていた灯里やアリスとともにひとしきり笑うのであった。
「アリシアさん、ただいまですー。アリア社長もただいまです。」
「ぷいぷいにゅー!」
「「おじゃましまーす。」」
年末の買い出しに出かけてお目当てのものを手に入れた一行はアリアカンパニーに戻ってきた。
「お帰りなさい、灯里ちゃん。あらあら、藍華ちゃんにアリスちゃんも。」
「こんにちはです、アリシアさんっ!」
ネコを被ったかのように急に口調を変えて挨拶する藍華にアリスは
「やっぱり藍華先輩、アリシアさんにでっかいラブなんですね・・・・・・」
と少し呆れた反応を示すのであった。
「当然よ、アリシアさんという偉大な人がいなかったら私、ウンディーネになる事はなかったのよっ!」
「藍華ちゃん、前々から思っていたんだけど、晃さんってそんな厳しい人じゃないと思うんだけどなぁ。」
「甘いわよ、灯里。晃さんはあんた達が思う以上にメチャ厳しいんだから。」
そこで藍華は一旦溜め息をつく。
「晃さんは一言で言うなら『ウンディーネ界のハートマン軍曹』ね。」
「ハートマン軍曹?」
3世紀も前の古典映画を持ち出されて二人は戸惑う。
「スパルタってもんじゃないわよ。下手したら軍隊並みかもしれないわ。特訓続きでもうトホホ。」
「藍華ちゃん・・・・・・」
藍華の背後にアリシアと晃がいるのに気が付いた灯里は心配そうに声をかける。
「灯里、私の心わかってくれるの?!」
「いや、あの・・・・・・」
「ほんっとうに私、いい友達持ったわー。神様、感謝しますっ!そこで、お願いがあるんだけど、アリアカンパニーと姫屋の間でトレード・・・・・・」
灯里は思った。間違いなく藍華ちゃんは間違いなく晃さんにお仕置きされると。
「すわっ」
「ぎゃーすっ!」
藍華が恐る恐る後ろを振り向くと晃が額に青筋を立てて仁王立ちしていた。
「藍華、この晃様の前でよくそういうことが言えたものだな?」
「あ、あ、あき・・・・・・」
歯の根が合わない藍華はただ冷や汗かいて震えるばかり。
「お仕置きスペシャルコースで逝くか、藍華?」
「灯里、後輩ちゃん、助けてっ!」
「でっかい自業自得です、藍華先輩。」
死刑宣告を行う裁判官のつもりになったアリスは藍華に引導を渡すのであった。
「いやぁぁ?!ヘルプミー、アリシアさんっ!」
「あらあら」
困った顔のアリシアも引き摺られていく藍華を見送るだけ。
紙を引き裂くような女性の悲鳴が上がるのはその後、すぐのことであった。
しばらく再起不能になった藍華を介抱しながら灯里はアリシアに問いかける。
「そう言えば今日はなぜ晃さんがいらしたんですか?」
「うふふ、私たち3人組恒例の習慣で大晦日はお互いの所に行き合ってお掃除したりとかお茶したりとかするの。」
「ああ、今年はアリシアのところでやる事になっていてな。掃除の手伝いに来たんだ。」
プリマになってからも年末年始は3人で集まることが多いのだという。大晦日のこの行事も3人が知り合った頃よりずっと続いているとのこと。
「後輩達が出来てより楽しい年末になりそうだな。」
「そうねぇ。もうそろそろアテナちゃんも来る頃ね。」
道に迷った揚げ句看板にしたたか顔面打ち付けたアテナが到着したあと、6人と1匹は分担して大掃除や正月料理に邁進するのだった。
夜、掃除も正月を迎える準備も終わり一段落したところで彼女達は暖炉の前で昔話、近所のうわさ話に花を咲かせるのだった。
「そういえば年越し蕎麦まだ食べていませんね?」
「出前とっちゃおうか。」
「アリシア、カツ丼並な。」
いつもの感覚で注文してしまう晃。みんなして爆笑するのであった。
赤面した晃は『すわっ』とかいいながらアリア社長のもちもちぽんぽんに八つ当たりするのであった。
「ぷいにゅぅ〜」
「晃さんの以外な一面を垣間見た気がします。」
「後輩ちゃん、私も意外だったわよ。」
出前の蕎麦も平らげ、みんな思い思いにくつろいでいる。
その中で灯里はアリシアと話をしている。
「私、マンホームにいたころの正月は家族とだけでまったりとしていたんですけど、こういう形で正月を迎えるのは初めてです。」
「灯里ちゃんが楽しそうでよかったわ。2年目のアクアはどうだったかしら。」
アリシアはほほ笑みながら灯里に問い掛ける。
「新しい友達も増えましたし、グランマにも出会えましたし、いろんな意味でとても充実した1年間だったと思います。」
「うん。出会いは人に対していろんなきっかけを与えてくれる。どんなきっかけをつかんでどんな風に歩んでいくのかは灯里ちゃん次第。」
「私次第・・・・・・」
「そう。きっかけを元にして人は成長できる機会を得ることが出来る。嫌なお客さんに出会うことがこの先あるかもしれないけどこれも成長できるきっかけの一つ。」
そこでアリシアは伸びをする。
「うーん・・・・・・。もうそろそろ広場へ行く時間ね。最後に灯里ちゃんに一言。」
アリシアは灯里に微笑んだ。
「灯里ちゃんならどんな人とでもうまくやっていけると思う。立派なプリマになれると私は確信しているわ。」
「アリシアさん・・・・・・」
灯里はアリシアからの励ましの言葉に胸を打たれる思いだった。
プリマになるために一生懸命頑張ってきた灯里の努力が報われた時でもある。
「アリシアさん・・・・・・」
「なぁに、灯里ちゃん?」
「私、頑張ります。アクアで一番の感動をお客様にあげられるようなウンディーネになって見せますっ!」
「うん。」
灯里の決意を受け止めて嬉しく思うアリシアであった。
by raptor24
| 2006-01-01 00:20
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